エアギターで腕が攣る

無題

4/1 13:09

先日(といっても3月の半ば頃だが)コンタクトレンズを初めて装用した。コンタクトをつけることを「装用」と表現することも、眼科に行って初めて知った。装用は読んで字の如く、取り付けて用いることを指す。

眼鏡をかけ始めた高校生の時分より、眼鏡過激派である俺は、これまでコンタクトレンズに対してさほど魅力を感じたことがなかったのだが、先日仕事が終わらず、カーシェアを利用して車で帰宅した際、眼鏡の度がいよいよ合っていないのと、労働による疲れから、道路標識をほとんど認識することができないという状況に陥った。全てがぼやけた世界の中で、動くものと色だけを頼りに逆ワイルドスピード帰宅をしたことでようやく危機感を覚えた。どうにかしないとそのうち車ごとスクラップになってしまう。

とはいえ眼鏡の度をこれ以上上げるとレンズの歪みによって眼精疲労が悪化することは目に見えているし、コンタクトレンズを常用するのはただただ面倒である。しょっちゅう眼鏡をかけたまま寝落ちしている俺にコンタクトレンズを毎晩外すなどという芸当ができるわけもない。

そんなわけで折衷案として、運転する時やオシャレの一環として利用したいときだけコンタクトレンズを装用し、それ以外の場面では今までの眼鏡を使用するのが最適解なのではないかという結論に至った。

考えがまとまれば後は早い。翌日には眼科に行き、視力検査をして装用の指南を受けた。

最初に眼科のスタッフの方が装用を手伝ってくれたが、他人に目の付近を触られると無意識に身体が強張ってしまい、まったくレンズが入らなかった。

早い段階で自分で装用しても構わないかと打診したが丁重に断られたため、そこから30分近く格闘していただくこととなり、ついに痺れを切らしたスタッフの方に自分で装用する許可をもらい挑んだところ、ものの数分でスッと装着できた。

一方でレンズを外すのには相当に手こずった。装用する時点で他の人に触れられてああなっていたのだから、外すとなったら尚更である。自分ではかなり勇気を出して外そうとしているつもりだったが、側から見ればうっすらと目の側面をなぞっている程度とのことで、耳と目を疑った。

「白目を押し込むくらいのイメージでレンズをつまんで外してください」と言われ、更に耳と目を疑いながら、失明も辞さない気持ちで勇んでつまんだところ、格闘を開始してから更に30分弱後にようやく外すことができた。俺もスタッフの方も疲労困憊である。

達成感もひとしお、帰り際に寄ったお手洗いで鏡を見たところ、長年連れ添った眼鏡がない自分の顔面の情報量の少なさに腰を抜かしてしまい、そのまま這いつくばるように眼鏡屋に駆け込んだ。真っ青な顔で今持っている眼鏡を度無しにしたいのだが可能か、と店員に相談したところ、店員は俺の異常な様子に一瞬面食らったのち、「レンズを変えるよりも新しいものを買ってしまった方が安い」と、さっと狼狽した表情をセールスの表情に切り替えた。その時持ち合わせていた眼鏡にはさほど執着も無かったので、言われるがままに店内で気になる眼鏡を選び、結局レンズを変える値段の3倍近い値段の眼鏡を買った。安物買いの銭失いをひどく恐れる俺はいつもこんなことばかりしている気がする。

さて、実際使ってみると、コンタクトレンズ、かなり便利である。

装用に慣れないため準備に時間がかかるのが珠に瑕だが、視界の歪みが発生しないのと、眼鏡の掛け替えに自由が増したことで、よりオシャレがしやすくなった。

今回コンタクトレンズを装用するに至ったきっかけは逆ワイルドスピード事件だったが、最近は自分をアップデートしたい機運も高まっており、そういった意味でも自分の可能性を拡げるいい一歩になった。