2025年に聴いたナイスアルバムをまとめました。選盤基準は2025年にリリースされたアルバム、EP(ベスト盤、ライブアルバムは除外)。
洋楽邦楽問わず、リリース順に記載しています。
配信されているアルバムから曲を抜粋したプレイリストはこちら。今回ストリーミングなしのアルバムも複数あります(ぶどうジュース、computer fight、Nikoん)。
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2025年ナイスアルバム - playlist by FoolishSaIto | Spotify
2/26 エスキベル/Sines

前作のEP『Childhood(発達) - EP』が非常に素晴らしい作品で、そこから夢中になっていた 2017年結成、東京のロックバンドによる2ndアルバム。高校生の頃に結成しているとのことなので、キャリアは長いものの、まだまだ若いバンド。
毛利安寿(fromステレオガール)、奥中康一郎(fromえんぷてい)の客演含め、今のロックシーンとのリンクも感じさせる。
深く深く思考を巡らせて練り上げられたであろうコンセプチュアルな歌詞と音。アコースティックギターのプレーンな響きとエレキギターのサウンドの絡み合いが全編通して美しく響くオルタナティブ・ロック。
聴くたびに自分自身とこのアルバムとの位相が変わり続け、新たな音と詞の解釈が見つかる、面白い一枚。
ライヴではシンセサイザー等も駆使し、より多角的なアプローチで音を探求しており、これからのより一層の深化も楽しみでたまらない。
2/26 水平線/Howling - EP

今年一番ライヴを観に行った、京都の4人組ロックバンドによるEP。
ツインヴォーカル&ギターと90’sブリティッシュ・ロックをベースとするウォームでレンジの広いサウンドが味わい深い。フジファブリックやくるりも感じる。
穏やかなアルペジオとツインヴォーカルのコーラスが心地よいミドルナンバー「シリウス」から幕を開ける今作は、ジャケット写真の反射光のように、思わず目を細めてしまうような懐かしく、淡く、切ない音で満ちている。京都のバンドはなぜかこの類のノスタルジアを持っているバンドが多い気がする。
2/28 Hope Tala/Hope Handwritten

ジャマイカ系の父親とイギリス、アイルランド系の母親をルーツに持つSSWの1stアルバム。
ネオソウル、R&B、ボサノヴァをベースに、スモーキーで甘い歌声で切なくポエティックな詞を歌い上げる。ミレニアルR&B〜ネオソウルテイストなミッドナンバー「Thank Goodness」〜低音ボイスのラップがスパイスとなる「Survival」の流れが特にお気に入り。
3/28 Maya Delilah/The Long Way Round

ブルーノートより、新世代の英ギタリスト/ヴォーカリスト、マヤ・デライラのファーストアルバム。
優しいフィンガータッチのギタープレイ(フレージングにはデレク・トラックスやジョン・メイヤーからのインスピレーションを強く感じる!)と、マイルドな歌声が兎にも角にも魅力。アウトロにかけての甘美かつドラマティックなギターソロが聴きごたえ抜群の「Begin Again」、コリー・ヘンリーの客演が終盤で冴え渡るインストナンバー「Jeffery(Feat. Cory Henry)」、グルーヴィなリズムセクションとホーン隊によるファンキーなナンバー「Squeeze」などなど楽曲の幅も広く、今後が非常に楽しみなアーティストの1人。
4/4 Momma/Welcome to My Blue Sky

アメリカはブルックリンのインディーロックバンド。
今年のシューゲイザー/オルタナアルバムベスト。「I Want You (Fever)」のスライサーをかけたようなエフェクティブなギターとマイブラ奏法で優勝を確信。新しい地平を拓こうとする気概を感じて勝手に涙ぐんでしまった。女性ツインヴォーカルによるコーラスワークスも秀逸。表題曲の「Welcome to My Blue Sky」は一点アコースティックギターがメインのミッドナンバーだが、絶妙なコード感の違和感とサビのメロの気持ちよさがクセになる。
4/9 ぶどうジュース/ぶどうジュース

2024年結成の東京のロックバンドによる1stアルバム。
ザ・ゆら帝グルーヴの「自意識ブレイクダウン」、ファンキーなビートを前面に押し出した「バナナ」、泣きのファジーなギターソロが痺れる「メイクラブ」、ロックンロール全開の「グミなガム」、ソングライティング力が遺憾なく発揮されている歌心とギターがクライマックス「おかえりなさい」、ラストはパンチのあるカッティングSFライクな「2250」、、、アルバムを通しての腹を揺さぶるドラムとベースのグルーヴ、味わい深いギターをガブ飲みできる至高の一枚。
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4/23 No Buses/NB2

なんやかんや2019年のファーストのリリースからずっと追っているNo Buses。
今作は明らかにギアがガチンと何段階か深く入っている。日本語を日本語らしからぬ様相で歌う今作のアティチュードには、サザンともGRAPEVINEのそれとも違う独特のムードがある。ギターのリフのポストロック感はAmerican FootballとRadioheadの二点間のまだ存在しないフィールドを探すかのような、試行錯誤の発明か(時折発作のように暴れ出す歪んだサウンドもたまらない)。初期のガレージロック、インディーロックの指向性からここまで音を探求し、変遷を続けていくバンドに最大限の拍手を送りたい。怪作かつ快作。
5/14 星野源/Gen

星野源7年ぶりのアルバム。
J-POPの極致となった前作「POP VIRUS」のリリース後、ネオソウル、R&Bを志向したサウンドでグッとディープな世界に潜り込んでいた彼の集大成とも言えるような、非常に深度のある一枚。ルイス・コール、サム・ゲンデル、サム・ウィルクス、イ・ヨンジ他海外ミュージシャンの多数の客演や、数多くのタイアップなど話題に事欠かないが、全16曲、純粋に曲がどれも素晴らしい。
サウンドはもちろん、今作では詞が特に刺さった。愛を描きながらも、常に底にある諦観、それでもともがき続けることの泥臭い美しさ。
「Why」のサビの“消えてゆくのに なぜ ただ 忘れたくない思い出を増やすのだろう ほら 終わりは 未来だ”というフレーズの中だけで、諦観も愛も悲しみも希望も、全てが丁寧に織り込まれている。
6/13 Subsonic Eye/Singapore Dreaming

リリースの度に選んでいる気がするが、リリースされるアルバムが毎回とてもよい。もう書くことが同じになってしまっている、、、
(以下今年寄稿したアジア音楽のネット記事から引用)
トップシェルフからリリース、シンガポールのインディーロックバンドSubsonic Eyeによる5thアルバム。シンガポールにもアツい音楽シーンあり! Sobs、motifsなど、インディーロック、ドリームポップ、シューゲイザーの優れたバンドがディグればディグるほど見つかる。
そんな中でもSubsonic Eyeは特筆すべきバンドのひとつ。シューゲイザーといえば、いわゆる〈マイブラ奏法〉と呼ばれるような、ギターのアームを用いながらコードストロークを行うことで、ギターの音をベンドさせたり、轟音で文字通りフロアを〈揺らし〉たり、〈揺れ〉というものに一家言あるもの。
このバンドはその〈揺れ〉を歌で表現している。マレー語訛りの英語で、マレー語特有のピッチ感をボーカルのメロディラインに援用しており、歌自体をベンドしているのである。それによって、轟音、耽美的なコーラス、ギターのアーミング、エフェクターによるトーンの揺れに収束しがちなジャンルの閉塞感を打ち破ることに成功している。インディーロックのフォーマットにありながら、どこまでもエキゾチックでワクワクさせてくれるバンドである。
7/4 ELIO/Autonomy

ウェルシュ・カナディアンのSSWによる2ndアルバム。
全体を通してシンプルなビート、アコースティックギターが爽やかに響くチェンバーポップ集。打ち込みのトラックの軽やかさがクセになる「Saturday Night」、韻の踏み方がクレバーで心地よい「Sugar, baby」などなど、肩の力が抜けたさっぱりとした聴き心地の曲が詰まったアルバム。疲れた心を優しく撫でてくれるような作品はやはり手元にモノとして置いておきたくなる。
7/11 Wet Leg/moisturizer

ドミノ・レコーズよりリリース、イギリスのインディー・ロックバンドによる2ndアルバム。
引き算の美学が冴え渡るバンドサウンドで、よく捻くれ、これまたよくキャッチーな歌をローテンションで歌い上げる。
前半の「catch the fist」、後半の「pillow talk」〜「don’t speak」でも顕著だが、しっかりとギターが楽曲の骨を作っている点が嬉しい。
8/6 Old Shoe’s/NEW SHOES

2025年結成の東京のバンド。
全体的にカントリー、フォークテイストなカラッとしたサウンド。バンド名にもなっている楽曲「オールドシューズ」は人生を旅に喩え、友としての靴と日々を生きることを見つめた詞が秀逸。どの曲も詞が良く、人生の悲しみを抱きながらもしかと未来を見据えている言葉がじんわりと沁み入る。録音・ミックスも自分たちで行なっているとのことだが、非常に素晴らしい仕上がり。歌がグッと映えている。
9/24 Nikoん/fragile Report

個人的な今年度のナンバーワンアーティスト。
リリース前から地方に移住して、そこでとにかくライヴをしまくってセールスを行うという、超絶インファイトスタイル。関西移住編の時にライヴを観に行って、ブチ抜かれました。そしてリリース後は47都道府県を巡るツアーを敢行。しかも今作「fragile report」に封入されているシリアルで、何とチケット代無料でライヴを観ることができるという。徹底的なまでに「ライヴ」にこだわった姿勢が一貫していて、最高にカッコいい。
音源もライヴ感がすごい。一曲目に雑踏のような音が入っていて、そこからシームレスに楽器が鳴り始めるので、自然と外界から隔離されて、気づけば彼らの音に釘付けにされている。
ダンサブルで重厚なビート、トム・モレロばりのひりつく金属質なギター、生身の歌声、壊れる寸前のような、胸を抉るリリック。
ぜひ、アルバムを聴いて、とにかくライヴに行っていただきたい!そんなバンド。
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9/26 Christone “Kingfish” Ingram/Hard Road

同世代のブルースギタリストではD.K. Harrellのアルバムも今年リリースで、個人的にはブルース熱が再燃した年だった。今回はキングフィッシュのこのアルバムを選びたい。
D.K. HarrellがB.B. Kingのフォロワーだとすると、キングフィッシュは風体こそB.B. Kingだが、マディ・ウォーターズ、ジミヘンフォロワーといったところか。加えてキングフィッシュはネオソウル的なフレージングも使いこなしており、ブルースの枠組みを果敢に拡張している。今作においても、これまでのハードで重ためのロック寄りのサウンドからメロウなR&Bにもアプローチして裾野を広げつつも、最後はど真ん中のデルタブルースできっちり締めるところも好感が持てる。
10/17 They Are Gutting a Body of Water/LOTTO

フィラデルフィアのアヴァンギャルド/シューゲイザーバンドの4枚目のアルバム。
ヘヴィでエクスペリメンタルなノイズとダウナーなメロディが昨今の日本のトレンドのブライトなシューゲイザーサウンドと対照的で、むしろニューウェーブ、ゴシックロックから派生してきた起源を考えると、シューゲイザーの本質はこういったダークサイドにあるよな、と感じた。ディストーションとモジュレーションのコントラストが心地良い「sour diesel」、「trainers」といった前半から、「american food」ではヒップホップのスクラッチサウンドも取り込んでいたりと、クラシックとコンテンポラリーのバランス感が絶妙。
12/3 ゴリラ祭ーズ/The Drifter

バンド名だけ見れば、完全に学生の悪ふざけ青春ロックバンドだが、実際のところはトクマルシューゴや大橋トリオあたりが好きな人にオススメしたいチェンバー・ポップ・バンド。そんなゴリラ祭ーズが覚醒した。
これまでインストメインの楽曲をリリースしていたゴリラ祭ーズが全編ヴォーカルありのアルバムを発表。古賀のヴォーカルがあまりにも、良い。歌の力が完全に楽曲をリードしている。彼の包容力のある暖かな歌声がゴリラ祭ーズの室内楽的サウンドに合うのなんの。
飾らない言葉を並べた歌詞も好印象。個人的にはアルバムの終盤を飾るタイトル曲「The Drifters」が白眉。
12/24 computer fight/a tension

Studio REIMEIでのセッション動画を観て完全に撃ち抜かれた、ポストパンク/アヴァンギャルドバンドによるEP。
ZAZEN BOYZ+トリプルファイヤー(ただしユーモア抜き)+Gang of Fourといった様相のポストパンク/アヴァンギャルドバンド。つまりキンッキンに尖っている。コンピューターを素手で殴りつけて破壊する勢いのポストパンクぶり。金属質なギターリフと捲し立てるように内省的でありながらポリティカルなリリックを吐き出すヴォーカル、血の気の多い変拍子とパンキッシュな猪突猛進ビートを刻み分けるベースとドラム。個人的には「enlightenment」が特にお気に入り。機械的な変拍子のリフに乗せて滔々と歌われる“今僕らが見ている景色は 偉人たちが残した現在”というリリック。乾いた生に虚しく響く啓蒙の言葉。しかし虚しさだけでなく、一縷の希望を感じてしまうのはなぜだろうか。
音源も十分最高だが、ライヴも超ド級。音が気に入ったら是非ライヴにも足を運んでみてほしい。
12/24 Laura day romance/合歓る

2部作で構成された渾身のアルバム(1部作は2/5リリース)。
恥ずかしながら名前はかねてより知っていたものの、なぜか聞かずにいたバンドのひとつ。今年の夏にフェスでのライター仕事の際に一緒になったライターの方がこのバンドのシングルリリースの際のインタビューをされており、その方から非常に魅力的なプレゼン(ライヴでの音作りの完成度の高さと音楽性の尋常ならざる追求っぷり)を受けたことでまんまと興味が出て前編のアルバムを聴いてみたところ、まあなんとも素晴らしい作品で、一聴したその勢いでワンマンライヴのチケットも取ってしまったくらいには射抜かれた。
アンニュイなヴォーカルとギターポップをベースとしつつも、実験的なサウンドとビートを果敢に盛り込んでおり、このポップネスとアヴァンギャルドのバランス感が非常に好み(ほんのわずかにアヴァンギャルド傾いている危うさが最高。ライヴでもその姿勢がしっかりと出ていて、ライヴを観ながら何度ガッツポーズをしたことか)。
前編ではラストの「渚で会いましょう on the beach」のビートのスイッチングの妙、後編では「ライター lighter」のイントロでのトリッピーなパーカッションからの透き通るようなヴォーカル・セクションへの流れるような繋ぎと、「ランニング・イン・ザ・ダークrunning in the dark」での疾走感溢れるビートの裏で暗く蠢く揺れ系のエフェクト・サウンドが特にお気に入り。
余談だが、妻がローラを聴いて「木村カエラみたいな平成感あるね」と言っていて、思わず膝を打った。
あとがき
2025年は6,184曲、865枚のアルバムを聴いた(Apple Musicのリプレイ機能で算出)。曲数は去年より微増(+178曲)、アルバム数は減(▲74枚)。
今年は盤を買ったものの、積ん読ならぬ積ん聴くを増やしてしまったのが悔しい。いつぞや上司が「盤を買っても聞けずに溜まっていっちゃうんだよね」と言っていたのに対して信じられない!買ったらすぐ聴きたいだろう!と思っていたのが、いつの間にか同じことをやっている。なるほど、買って安心しちゃうんですね。今ならよく分かります。
仕事面では念願のライター仕事が広がりを見せ、各所で文章を書かせていただける機会に恵まれたことに加えて、12月はラジオにも出演させてもらった。案外べしゃりも面白く、今後はもう少し色んな方面に足を伸ばせていけたらと思う。
好きなこと(音楽を聴くこと)を仕事にしてそろそろ10年近くになる。「可能な限りの良い音楽を聴いて死にたい」という人生命題は相も変わらず、音楽を聴いていることがそのまま仕事に活かせるということのありがたみを年々感じるばかりである。このまま気持ちの良い音楽を聴き続けて、流れるように墓へダイブしたい(天寿を全うして)。
以下は今回書ききれなかったナイスアルバム。
Loaded Honey/Love Made Trees
Mei Simones/Animaru
luv/Already
水いらず/水を捨てよ、内へ還ろう
Bedroom June/Bedroom June - EP
The Beths/Straight Line Wa a Lie
Khamari/To Dry a Tear
roi bob/POOL - EP
Alfa Mist/Roulette
Royel Ortis/hickey
pami/puffette
サザンオールスターズ/THANK YOU SO MUCH
Seashine/Seashine
downy/第八作品集『無題』
Silas Short/LUSHLAND
梅井美咲/Asleep Above Creatures