エアギターで腕が攣る

2023年ナイスアルバム

今年の良かったアルバムをまとめました。Apple MusicのReplay機能で確認したところ、今年は4299曲、784枚のアルバムを聴いたらしい。曲数は去年より微増。枚数は減。

2023年にリリースされたオリジナルアルバム、EPが対象。過去のアーカイブは下記より(Tumblrのため、途中でアカウント登録を促される最悪な仕様)。

何気に今年でこのまとめを作成し始めてから10年目になりました。高校生から続けていると思うと随分酔狂なものだと思う反面、えらいものだなとも。10年も続いていることなんて人生でそうそうない。

sekitoh on Tumblr

各アルバムから一曲ずつ選んだプレイリストはこちらから。聴きながら読んでいただくとより楽しめるはずです(大林武司“TBN”トリオはサブスク未解禁のため未収録)。

◾️Apple Music

‎FoolishSaItoの2023年ナイスアルバム - Apple Music

◾️Spotify

2023年ナイスアルバム - playlist by FoolishSaIto | Spotify


邦洋関係なく、リリース日でソートしています。

 

1/18 ジョナゴールド/WEEKEND

f:id:sekitoy_tn72:20231231161935j:image

元りんご娘メンバー、ジョナゴールドのソロアルバム。歌が上手い、声が良い、曲がいい。三拍子揃っている王道のポップ・アルバム。おかもとえみ作曲「WAVY BABY」はグルーヴィなトラックと淡いシンセとギターのウワモノが彼女のハリのありつつも優しく伸びやかな歌声にマッチした良曲。

 

2/10 Kelela/Raven

f:id:sekitoy_tn72:20231231161956j:image

R&BシンガーKelelaの2ndアルバム。本年リリースのPinkpantheressのアルバムにも客演しており、シーンの活気を感じる。実際「Happy Ending」は2ステップガラージ的だし、シナジーを感じずにはいられない。Pinkpantheressはシルキーでキュートなヴォーカルとドラムンベースを基調にしているが、KelelaはよりハスキーでスムースR&B的なニュアンスを感じる。加えて「On the Run」ではクラブミュージックへの接近も予感させる。余談だが、水面顔出しジャケットの流行りは一体どこまで続くのか。

 

3/2 みぃなとルーチ/Waiting for the moon to rise

f:id:sekitoy_tn72:20231231162020j:image

さよならポニーテールのメンバー、みぃなによるソロプロジェクトの2ndアルバム。牧歌的で伸びやかな歌声が何よりの魅力。フォーキーなポップソングから、ポエトリーリーディングを交えた変則的な楽曲まで、彼女の歌と詞を中心に編まれた8曲はどれも耳馴染みがよく、良質。「花の冠」でのマラドーナを想起させる詞は、まるで自分が広いコートに立っている様を幻視するかのよう。ジャケットを手がける我喜屋氏のアートワークも秀逸。

 

3/22 Qoodow/水槽から - EP

f:id:sekitoy_tn72:20231231162042j:image

2021年結成の大阪の4人組バンド。メンバーによるセルフレコーディング作品。オルタナサイケデリックシューゲイザーのフィーリングを中心としたサウンド感。君島大空が好きな人にはど真ん中で刺さりそう。通奏低音として存在するメロウさ、哀愁がたまらない。特に気に入ったのは「エスパー通り」。ノイジーさとめくるめく展開、気怠いヴォーカル、イカれたギタープレイがこれまたたまらない。

 

4/12 Apes/PUR

f:id:sekitoy_tn72:20231231162155j:image

羊文学も所属する(株)次世代のオーディションでグランプリを獲得した東京のスリーピースバンド。American Footballを彷彿とするクリーンなギターアルペジオによるイントロ「PUR」、骨太なロックサウンドが響くアンセムStay Alive」、エモ・マスロックと通過した「Wake me up!」など、オルタナティブ好きにはたまらない一枚。

 

4/19 Fenne Lily/Big Picture

f:id:sekitoy_tn72:20231231162211j:image

英のフォークSSW。デッド・オーシャンズからのリリース。3rdアルバム。プレーンなサウンドと遊び心。心を優しく解きほぐしてくれるウォームなヴォーカル。通底する哀しみ。それを超える愛。仕事の休憩中、机に突っ伏している時に一番よく聴いた一枚。シンプルなドラムとベースラインの美しさが際立つ「Pick」が特に気に入っている。

 

4/21 Alfa Mist/Variables

f:id:sekitoy_tn72:20231231162227j:image

イースト・ロンドン出身のピアニスト・プロデューサーによる5枚目のアルバム。トム・ミッシュ、ジョーダン・ラカイ、ユセフ・デイズといった気鋭のミュージシャン達との共演はもちろん、『Antiphon』をはじめ、自身のソロ作品も大きく注目を集めている。今作もジャズの垣根などとっくのとうに軽く飛び越え、彼のルーツであるヒップホップから、アフロビート的アレンジ、そしてジェイミー・リーミングのプレイが印象的なリードトラック「Variables」など、多種多様な楽曲が聴ける。

 

4/19 ExWHYZ/xANADU

f:id:sekitoy_tn72:20231231162242j:image

アイドルカルチャーとクラブミュージックの交差点の現在地。今年一番再生回数の多かったアルバム。WACKのグループとしては異色なクラブミュージックに傾倒した楽曲が8割を占めている。昨今のライブではPorter Robinsonの「Something Comforting」や、楽曲提供を受けている大沢伸一の「Our Song」もカヴァーしており、アイドルファンをむしろ置き去りにしかねないほどの尖りっぷり。今作も大沢伸一だけでなく、80KIDZ山田健人ケンモチヒデフミなど名だたるミュージシャンらによる楽曲が揃っている。メインヴォーカルのmayuとmahoの相反する個性のヴォーカルラインが決して楽曲に負けない強度を誇っており、グループとしてのアイデンティティを保持しているのもクール。

 

5/9 People In The Box/Camera Obscura

f:id:sekitoy_tn72:20231231162259j:image

前作でのピアノをメインにした楽曲から一転、改めてギターの可能性の追求に回帰したような印象。彼らは現状新作に関してはCDを全国流通で取り扱うことをやめているため、CDはアーティストのサイトより直接買う必要がある。CDが届いて緊張しながら、自宅のオーディオプレーヤーでCDを再生した瞬間のことをよく覚えている。なまじっか自分の血肉となっているほどに好きなアーティストの新譜を聴く時はいつでも身が引き裂かれる可能性を想起してしまい、身体がこわばる。1曲目の「DPPLGNGR」のイントロでのシンセギターとヴォーカルによる1分25秒間という昨今のポップミュージックではそうそうない贅沢な時間によってジリジリと高められた緊張が、次の瞬間に蠢くバンドアンサンブルの轟音で一気に決壊した瞬間、こわばった身体は熱を持って解放され、今回も彼らの作ったアルバムが傑作に違いないことへの喜びでいっぱいになった。

 

5/12 Yazmin Lacey/Voice Notes

f:id:sekitoy_tn72:20231231162318j:image

今年来日公演があったことも記憶に新しい、イースト・ロンドン出身のネオソウルシンガーによる1stアルバム。スムースR&B, JAZZをローファイさでラッピングしたかのようなサウンド。ジャイルズ・ピーターソンによるフックアップも記憶に新しい。レゲエ的なグルーヴとスウィートR&Bのマリアージュが心地よい「From A Lover」が特にお気に入り。Alfa MistやOscar Jeromeをはじめ、この界隈の音楽はいつでも新しい発見や興奮に満ちていてとても楽しい……。

 

5/24 cero/ e o

f:id:sekitoy_tn72:20231231162343j:image

今年、音楽好きたちが全員聴いていたと言っても過言ではないような一枚。シティポップサウンドからの離脱、よりアンビエントアヴァンギャルドな方面に船を進めた一枚。リリース直後は難解すぎるという声と絶賛の声が入り乱れていた印象。楽器と詩とメロディのバランスがあまりにも美しい。この作品を深く深く掘り下げたレビューはごまんとあるので、解釈に困ったらそれらを参照してみるのもよいが、とにかく小難しいことは一旦考えず、音を聴くということの快楽に向き合うだけで答えはそこにあると思う。

 

5/31 omeme tenten/2020 - EP

f:id:sekitoy_tn72:20231231162356j:image

2022年結成の東京の4人組ロックバンド。ヴォーカルが飛び抜けてよく、今年かなり聴き込んだ一枚。ジュディマリ的な爆発感のあるヴォーカルとバンドアンサンブル。普段ほとんど歌詞が入ってこない自分にしては、珍しく歌詞がスッと耳に入ってくる。「From East」の「まるで君は踊り場で初めて見たようにわーっと褒めたりなんかした」という歌い出しから、「ブランドスキニー汚せない 前髪伸ばした私のプリンセス」という歌詞が「ブランドスキニー着こなせない 前髪を上げた私のプリンセス」に変わっていくといった歌詞の言葉選びも絶妙。表題曲の「2020」もふくよかなリバーブの効いたオルタナティブなギターとヴォーカルが心地よい良曲。今年の日本のインディーズバンドの作品で一番良かった。

 

6/2 大林武司“TBN”トリオ/THE BIG NEWS

f:id:sekitoy_tn72:20231231162441j:image

MISIAのツアーにも帯同していたピアニスト大林武司を筆頭に、ベーシストはロバート・グラスパーパット・メセニーら名だたる巨匠達との演奏も印象的なベン・ウィリアムス、そしてドラムスには現行ジャズ・シーン最高峰のプレイヤー、ネイト・スミスを迎えたドリームチームによるスペシャル・アルバム。本名義でのリリースは今作が初めてだが、このメンバーでの初演はコロナ禍前の2019年「Blue Note at Sea」に遡る。2023年にビルボードでのライヴを観に行ったが、各人の超絶なプレイングはもちろん、3人のソウルフルネスっぷりに観客のボルテージも最高潮といった具合で、ここ数年観たライヴの中でも屈指の演奏だったことを記憶している。スタンダードなジャズから、Kenny Dorham「La Mesha」のカヴァー、変拍子が心地よい「Stepfar 2feel」、最後のエピローグはローファイヒップホップ的なニュアンスが目新しい「Bop Boom」など、遊び心にも溢れた一枚。ちなみにストリーミングは解禁されていない。ぜひCDを買って聴いてほしい。

 

6/28 Cornelius/夢中夢 -DREAM IN DREAM-

f:id:sekitoy_tn72:20231231174831j:image

コーネリアス7枚目のソロアルバム。前作『Mellow Waves』からの流れを引き継ぐ、ミニマル〜アンビエントを行き来する作風だが、より血の通ったサウンドと無機質さのせめぎ合いを強く感じる。シンセベースとキレのあるギターリフ、自らの傷をさするような歌詞が、無機質なサウンドによってむしろ際立つ「火花」、ギターリフの繰り返しが心地よい「Too Pure」、アンビエンスな霧にまかれる「霧中夢」などが特に印象的。

京都にて開催されたAMBIENT KYOTOでは上述の楽曲のうち、「Too Pure」と「霧中夢」がインスタレーションとして展示されていた。展示に行った際の感想は下記の記事に書き留めているが、よりこの作品を深く、多角的に味わうことができた。

無題 -

 

7/12 SAGOSAID/Tough Love Therapy

f:id:sekitoy_tn72:20231231162621j:image

今年聴いたジャパニーズ・オルタナティブの中でも指折りで良かった。海外ならBeabadoobeeを筆頭に、日本ならラブリーサマーちゃんらをはじめとした90‘s〜00’sオルタナティブリバイバル的文脈のサウンド。個人的にはTommy heavenly6のポップネスのあるグランジオルタナティブ性に通ずるものを感じて気に入っていた一枚。

 

7/14 Blake Mills/Jelly Road

f:id:sekitoy_tn72:20231231162640j:image

カリフォルニアを中心に活動するギタリスト/プロデューサー、Blake Millsによるソロ5枚目のアルバム。Alabama Shakes, Lana Del Ray, Fiona Appleなどのプロデュースも手掛けており、その手腕を知る人も多いが、ギタリストとしてもエリック・クラプトンの主催するクロスロードフェスに出演経験があるほか、ノラ・ジョーンズのサポートギタリストを務めるなど折り紙付きの実力である。今作はカントリー/フォークを中心にしながら、彼自慢の立体的かつ唯一無二のサウンドプロダクションを存分に味わうことができる。リードトラック「Jelly Road」でのギターと木管楽器の交錯するサウンドは上述の個性を象徴するような一曲。

 

8/9 KOTONOHOUSE/moeǝɯo

f:id:sekitoy_tn72:20231231162657j:image

今年のベストハイパー・カワイイ・ポップ。フューチャーベース、インターネットミュージックが好きな音楽ファンであれば、「え アタシ!?」のサウンドロゴは一度は耳にしたことがあるはず。今や世界を駆ける日本のトラックメイカー/DJ、KOTONOHOUSEによる2ndアルバム。今作もフューチャー・ベース、ハイパー・ポップを基軸に、4s4kiやrinahamu、PURE 100%といった国内外問わず共鳴する客演を招いた意欲作。PURE 100%との共同クレジットである大アンセム「New ambience」は後半で突如投入されるギターリフが全てを掻っ攫っていってくれる。最高。

 

8/18 Cautious Clay/KARPEH

f:id:sekitoy_tn72:20231231162712j:image

ジャズ・R&B SSW, プロデューサー Cautious Clayの2ndアルバム。アルバムのタイトルであるKARPEHはCautious Clayの本名ジョシュア・カルぺから。ネオソウル/ジャズのフォーマットにありつつ、「The Tide Is My Witness」ではテクニカルなドラムスとブラスの絡み合いがより先駆的に響く。今作では現代ジャズギタリストシーンの至宝、ジュリアン・ラージとの共作も多数。特に「Another Half」でのエアリーに揺蕩うヴォーカルと、R&Bマナーなサウンド、そしてジュリアン・ラージのギタープレイの親和性の深さにただただ驚く。あまりにも心地よい。

 

8/25 Toro y Moi/Sandhills - EP

f:id:sekitoy_tn72:20231231162724j:image

作品ごとに色を変え続けているトロイモワ。前回はファンク、今回はフォーク。これだけ様々な音楽性を行き来していながらも、毎回オリジナリティが損なわれないのはもはや曲芸的である。しかしChazの声がこのアコースティックなサウンドに合うのなんの。Elliott Smithを引き合いに出したくなるグッドミュージック。

 

9/1 Puma Blue/Holy Waters

f:id:sekitoy_tn72:20231231162753j:image

サウスロンドン出身のミュージシャン、Puma Blueによる2ndアルバム。ネオソウル的アプローチが中心にありつつも、前作から更に内省的ダークさを増して、いよいよ後期レディオヘッドのようになっている。特にシビれたのは「Hounds」のダウナーなヴォーカルとブラス隊による金属音のコントラスト、徐々に熱を高めていくアンサンブル。暗い血が沸るようで最高。

 

9/15 Subsonic Eye/All Around You

f:id:sekitoy_tn72:20231231162916j:image

シンガポールのインディーロックバンドによる4thアルバム。彼らの音楽はある種の新しいシューゲイザーだと思っている。シューゲイザーは絵画で言うところの印象派であり、絵画では光を描くところを、音楽では揺れを描いている。このバンドは“揺れ”というものを歌で表現しており、さらにはこの歌を言語レベル(マレー語訛りの英語)で揺らしており、ギターのアーミング、エフェクターによるトーンの揺れに収束しがちなジャンルの閉塞感を打ち破ることに成功している(と俺が勝手に思っている)。インディーロックのフォーマットにありながらどこまでもエキゾチックでワクワクさせてくれる一枚。

 

9/22 yeule/softscars

f:id:sekitoy_tn72:20231231162943j:image

シンガポール出身のミュージシャン。ハイパーポップ、ヴェイパーウェイヴといったインターネット・ミュージックを通過した、ノイズ・グリッチを多用したアヴァンギャルドで幻想的なポップミュージック。アイコニックでアヴァンギャルドなビジュアルとキュートなヴォーカルのギャップになんとも惹きつけられてやまない。今作はなんとNinja Tuneからのリリース。前述したSubsonic Eyeもだが、ジャンルの垣根を超えて、アジア圏の音楽がとにかくアツい。「ghosts」のメロウでプレーンなサウンドでは彼女のメロディメイクの繊細さが窺える。

 

9/29 Slow Pulp/Yard

f:id:sekitoy_tn72:20231231162957j:image

今年のベストオルタナアルバム。Death Cab for Cutieのツアーに帯同するなど確実に知名度を上げているシカゴのインディーロックバンドによる2ndアルバム。2020年リリースの「moveyes」も非常に良かったが、今作も非常に良質なローファイ・インディ・オルタナを聴くことができる。「Slugs」での茹だるようなビートとファジーでローファイなギターと共に歌い上げられるラブソングは白眉。”Coz you’re summer hit, I’m singing it.”というフレーズがたまらない。

 

11/1 TEMPLIME & 星宮とと/POP-AID

f:id:sekitoy_tn72:20231231163019j:image

楽曲の作成を担当するTEMPLIMEとディレクション、ヴォーカルを担当するヴァーチャル・シンガー星宮ととのユニット。ポップス〜ガレージロック、クラブミュージックまで幅広い楽曲が堪能できる。クラウドファンディングで作品作成&ライヴ実施等を行い、完成した一枚。自分もクラウドファンディングに参加して、リターンとしてこの作品を受け取った。CD盤では既にリリースされているEP『Skycave』『Escapism』もまとまって収録された大ボリュームな一枚(ストリーミングだと上述のEPからは各数曲収録されている)。

リードトラックの一曲である「Tarinai」は楽曲のキュートさ、ポップさもさることながら、MVがとにかく最高。

Tarinai - HOSHIMIYA TOTO+TEMPLIME - YouTube

 

11/10 Pinkpantheress/Heaven Knows

f:id:sekitoy_tn72:20231231163050j:image

2ステップガラージドラムンベースリバイバル筆頭は間違いなく彼女。ほうぼうでこれが良かったと吹聴して回っている。シルキーなヴォーカルと上述のビート、日本であれば2000年代初頭にm-floがやっていたようなことをR&Bのテイストを土台としながら地でやっている感じ。「Ophelia」は死の匂いが立ち込めたような静謐さと透明さの美しさが抜きん出ている。

 

12/6 THE NOVEMBERS/The Novembers

f:id:sekitoy_tn72:20231231163105j:image

セルフタイトルに名折れなし。名刺代わりの大傑作。前作『At The Beginning』にてL'Arc〜en〜Ciel yukihiro氏によるマニピュレータの導入、Gt. Vo.小林氏のTHE SPELLBOUNDでの活動、Ba.高松氏のPetit Brabancon での活動、Drs.吉木氏のayutthayaでのサポート活動、Gt.ケンゴマツモト氏のドレスコーズへの客演など、ジャンルの垣根を超えたメンバーの音楽活動によって更に強固となったサウンドは、16年ぶり2度目のセルフタイトルに相応しいロックアルバムに相応しい。

1曲目「BOY」で掻き鳴らす轟音のギターロック、「Seaside」で魅せるニューウェーブライクなメロディ、高松氏のエキゾチックなベースラインが妖艶に輝く「Cashmere」、味わい深いミッドナンバー「かたちあるもの、ぼくらをたばねて」「抱き合うように」……。関ジャムにて川谷絵音氏も絶賛していたが、なぜこのバンドがミュージシャンに愛されるのか、その所以が余す所無く発揮された一枚(店頭販促文より引用)。

 

12/6 羊文学/12 hugs (like butterflies)

f:id:sekitoy_tn72:20231231163121j:image

この新譜を機にしっかりと羊文学を聴いた。今この時代を生きている人間の確かなブルーズがあり、とても良かった(昨年大石晴子の新譜を聴いた時にも同じことを思った)。

特に「honestly」からラストまでの流れが本当に良い。自分という身体・心からどうにもこうにも離れてくれない愚かさや虚しさに苛まれながら、それでもつづく生活を「FOOL」で最後まるっと抱えていく覚悟を明るく歌い上げる構成、自身を肯定する讃歌として素晴らしい。余談だが、ライヴで塩塚氏がジャケットのアートワークのように自らを抱きしめることを「バタフライハグ」と呼ぶと話していた。作品を聴いて感じたことの伏線が回収されたような気がした。

 

以上、全27枚でした。最後まで読んでくださった方、ありがとうございました!