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昨日はいやに風が強い日だった。朝方には雨が降っていたようで、地面には水たまりがちらほらと見えた。雲は強風で押し退けられており、日差しが目に刺さった。
自分の書いた去年の文章を読み返していると、何とも甘美で穏やかな愛の日々を過ごしていたんだな、と思った。勿論文字にしていないが辛いこともあったし、諍いもあったが、それでもあそこにあったのは紛れもない愛だった。
今あの日々に戻りたいか?と聞かれると、もう戻りたいとは思わないが、少なくとも、少なくともあの日々の中で感じていたものは嘘偽りない愛そのものだったと、今でも思う。
その残り香のようなものが時折鼻先を掠める。
そんなことを考えていたらこんな時間になってしまった。
渦中にいる時は気付けないことばかりだ。あの時は一切曲を書けなかったし、書く暇も無かった。
愛の只中にいたのに、愛の歌のひとつだって書けやしなかった。
併せて、父のことも思い出した。届かないことばかりに思いを馳せてしまうのはひとの悪癖だ。手を伸ばしたいと思っているか否かに関わらず、届かないというただそれだけで思いを馳せてしまう。
母は一体何を考えていたのだろうか?きっと母にも風が通り抜けるように、過ぎ去った日々が去来することがあったはずだ。たかだか数年程度愛する人と過ごした俺がこの有り様なのだから、数十年連れ添った母は尚更だろう。
先日帰省した際には終ぞ聞く機会がなかったが、いつか尋ねることができる日が来るのだろうか?
尋ねるのはあまりに野暮かもしれないな。分からないな。
そういえば今日は父の誕生日だ。